毎週末は、ドル円・株式市場を含めた金相場価格のウィークリーコメントを。
月末には、マンスリーコメントを提供。
下記に、「2023年12月」のマーケットコメント(週間、月間、年間)をまとめました。
【2023年12月】金相場価格ウィークリーコメント(全5週)
2023年12月・第1週(11/27〜12/1)
2023年11月27日~12月1日週のNY金相場は2,000ドル近辺でスタートし、週初から3日連続で続伸する流れとなりました。
反落後の金曜日には再び大幅上昇し、コロナ禍で「有事の金」として買われた2020年8月の高値を3年4ヶ月ぶりに更新、史上最高値となる2,089.7ドルで取引を終了しました。
パウエルFRB議長発言を受けての米利上げ終了観測が金の買い材料となり、米ISM製造業景気指数も13ヶ月連続で景気減速傾向を示していることから、米金利低下を支援材料としたドル売り、金利の付かない資産の金買いといった動きが見られます。
国内金価格も最高値を更新しています。
NYダウ平均株価は週後半にかけて大幅続伸の動きとなり、金曜日の終値は36,245.5ドルで今年の最高値を更新しました。NY金相場に続き史上最高値更新が目前となっています。米経済指標などで示される実態経済と比べ、現在の株価は買われすぎとの見方がある一方、余剰となっている投資資金の向かい先は金融緩和(利下げ)観測による株式への資金シフトが続き、年末にかけて株価を押し上げる大きな要因となっています。
週初149円前半で始まったドル円相場は円高ドル安の流れが優勢となり、ストップロスを巻き込みつつ146円台後半へ下落スピードを早める展開。一旦ドル買い戻しで148円台へ回復するも上値は重く、金曜日には再びドル売り先行で146円台後半へ下落、月曜日高値から約3円の円高ドル安水準で取引を終了しました。米利上げはすでに終了との市場見通しに変化はなく、2024年第2四半期以降の米利下げ開始観測を背景に、依然としてドルは売られやすい状況が続いています。
12月4日~12月8日週の主な経済指標は、8日(金)に発表される米雇用統計が注目されます。前回、前々回は予想を下回る結果となりましたが、今回もう一段下振れするようであれば景気減速傾向を裏付ける形となり、米国の早期利下げ期待が高まる展開が予想されます。
また、国内金価格の高値更新が続くのかにも注目です。
2023年12月・第2週(12/4〜12/8)
2023年12月4日~12月8日週のNY金相場は、2020年8月以来3年4ヶ月ぶりに更新された最高値2089.7ドルから一転して売り優勢となり、金曜日は2014.5ドルで取引を終了しました。
マーケットは経済指標や要人発言に一喜一憂する展開が続きますが、金曜日に発表された予想より強い米雇用統計を受けて、利下げ開始時期の後退観測と米長期金利の上昇が金相場の弱材料となりました。また、市場予想を大幅に上回った米ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)もインフレ期待の後退から金価格の上値を抑える要因となっています。
NYダウ平均株価は、週前半は米雇用統計を控え様子見の参加者が多く小幅な値動きが続きましたが、雇用統計発表後の金曜日の終値は36,247.9ドルと5日ぶりに今年の最高値を更新、終値ベースの史上最高値に迫っています。
発表された米雇用統計では、非農業部門雇用者数は市場予想を上回る19.9万人、失業率は市場予想を下回る3.7%とそれぞれ強い結果となり、景気悪化懸念の後退が株式市場の支援材料になっています。年末にかけて株価は一段高となるのか引き続き注目されます。
週初147円前半で始まったドル円相場は、7日(木)NY時間に植田日銀総裁の発言を受けて売りが売りを呼ぶフラッシュクラッシュが発生、一時141円台後半にまで急速に円高ドル安が進む場面がありました。
その後はドルが買い戻され、144円台後半で金曜日の取引を終了しています。2024年第2四半期以降の米利下げ開始観測と日銀のマイナス金利解除の思惑により、ドル円相場が上下に大きく乱高下する一週間となりました。引き続き、ドルは売られやすい状況です。
12月11日~12月15日週に予定されているイベントでは、FRBが金融政策を協議する米連邦公開市場委員会(FOMC)が12日(火)〜13日(水)に開催されます。FOMC終了後には政策金利が発表されますが、日本時間14日(木)早朝にパウエルFRB議長の記者会見が予定されています。主な経済指標では、12日(火)に発表される米消費者物価指数が注目されています。
2023年12月・第3週(12/11〜12/15)
2023年12月11日~12月15日週のNY金相場は、12日(火)〜13日(水)に実施された米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きが決まり、年3回の利下げ見通しが示されました。
市場では米金利低下を織り込む動きからドル売りが優勢となり、NY金先物は前週終値比で上昇、金曜日は2035.7ドルで取引を終了しました。ウィリアムズNY連銀総裁による早期利下げ観測けん制発言もあり、上値は抑えられています。
来年の米利下げを織り込み過ぎているとの見方がある一方、円高ドル安傾向が続いており、為替要因から国内金価格の上値は重く推移しています。
NYダウ平均株価は、FOMCの結果を受けて景気減速懸念が薄れたことから買い戻し優勢となり、週間では全営業日で上昇となりました。重要イベント通過により市場に安心感が広がったことから、金曜日の終値は7日続伸となる37,305.16ドルで取引を終了。水曜日に2022年1月以来およそ1年11ヶ月ぶりの高値をつけましたが、3日連続で史上最高値を更新しています。
ナスダック総合株価指数も終値で史上最高値を更新。S&P500種株価指数も史上最高値に接近しており、こちらも年内に最高値を更新するのか注目されています。
週初145円前後で始まったドル円相場は、FOMC後にドルが売られ一時140円台後半をつけましたが、142円台前半で金曜日の取引を終了しました。11月中旬以降のドル円相場は、日米の金融政策転換を巡る思惑から円高ドル安のトレンド相場の様相を呈しています。
今週開催される日銀金融政策決定会合後の総裁発言によっては、日米の金利差が早期に縮小されるという観測が広がり、円買い・ドル売りの動きが加速する場面も想定されます。
12月18日~12月22日週に予定されているイベントでは、国内で18日(月)〜19日(火)に日銀の金融政策決定会合が開催されます。米欧英の中央銀行が2024年から相次いで利下げに転じる見通しの中、日銀がマイナス金利政策の解除を含めた金融緩和政策の修正について、出口戦略への言及があるのかが市場の焦点です。19日(火)に会合結果公表と植田日銀総裁の会見が予定されています。
2023年12月・第4週(12/18〜12/22)
2023年12月18日~12月22日週のNY金相場は、米連邦公開市場委員会(FOMC)通過後の年末高を意識した押し目買いが優勢となり前週終値と比べ上昇、金曜日は2069.1ドルで取引を終了しました。
米国GDP確報値の下方修正や市場予想を下回る米個人消費支出(PCE)物価指数が、来年の米利下げ見通しを強める結果となっています。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長は「利下げの時期が次の問題であり、それを検討し議論している」と述べており、市場は既に2024年の利下げを織り込んで推移しています。
今後の関心は、利下げの開始時期と利下げ回数に移っていますので、要人発言などに振らされる展開が想定されます。
NYダウ平均株価は、ナスダック指数と共に週間ベースで8週連続の上昇となり、金曜日の終値は37,385.97ドルで取引を終了しました。米株式市場はすでに割高といった見方もあり、クリスマス休暇を前にした上昇一服感から、水曜日には475ドル安と10日ぶりの急落局面がありました。一時的に利益確定の動きが出たものの高値圏で推移しており、金融緩和(利下げ)観測による株式への資金シフトから、株価指数は史上最高値を更新する年末ラリーが続いています。
週初142円台前半で始まったドル円相場は、18日(月)〜19日(火)に開催された年内最後の日銀金融政策決定会合で大規模金融緩和政策の現状維持が決まり、想定範囲内の公表結果を受けて円売りが加速、火曜日には一時145円に迫りました。金曜日の終値は142円台前半で取引を終了しています。
今週はクリスマス休暇と年末年始を控え参加者が減少しますが、国内では日銀関連の材料に注目が集まっており、薄商いでも総裁発言などで値動きの大きな展開には注意が必要でしょう。
12月25日~12月29日週に予定されている主なイベントは、25日(月)の欧米市場はクリスマス休暇で休場、28日(木)は米新規失業保険申請件数が発表されます。国内では、25日(月)に日本経済団体連合会審議委員会で植田日銀総裁の講演が予定されており、質疑応答などを通じて金融政策の出口戦略について言及されれば、市場に影響を与えることになりそうです。
2023年12月・第5週(12/25〜12/29)
2023年12月25日~12月29日週のNY金相場は、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待や米国債利回り低下を受けてドルが売られ、金利の付かない金は押し目買いが入り前週終値と比べ小幅に上昇、金曜日は2071.8ドルで取引を終了しました。
欧米のクリスマス休暇で積極的な売買が手控えられましたが、火曜日には地政学リスクが改めて意識される材料があり、安全資産として金は買われました。
NYダウ平均株価は、ナスダック指数、S&P500指数と主要3株価指数が揃って週間ベースで9週連続の上昇となり、終値は37,689.54ドルで取引を終了しました。2023年の一年間では2年ぶりの上昇で、年間上昇率は約14%と2021年以来の大きさです。
11月以降の急ピッチな上昇には高値警戒感が出ているものの、FRBの早期利下げ観測から株式市場への資金流入が続き、S&P500指数はNYダウを上回る約24%、ハイテク株が多いナスダック指数は約43%の年間上昇率となりました。
週初142円台前半で始まったドル円相場は、欧米市場のクリスマス休暇と年末年始を控え薄商いの中、前週からのドル売りの流れを受けて円高ドル安が進行しました。木曜日には一時140.25近辺をつける場面がありましたが、金曜日の終値は140円台後半で取引を終了しています。
テクニカルでみても、11月中旬以降のドル円相場は明確な下降トレンドを形成しており、日足チャートの20日移動平均線が綺麗な右肩下がりとなっていることから、ドルの戻りは引き続き売られやすい地合いです。
国内では、日銀のマイナス金利解除観測が浮上していますが、金融緩和政策に修正があればFRBの金利引き下げと合わせて、円高ドル安の大きな材料となります。
1月1日~1月5日週の主な経済指標は、3日(水)に米ISM製造業景気指数の発表と12月12日〜13日開催分のFOMC議事録が公表されます。5日(金)には米12月雇用統計が発表されますが、米労働市場は緩やかながら減速傾向が続いており、予想を下回る結果となれば、米国の早期利下げ期待が高まる展開となりそうです。
【2023年12月】金相場価格マンスリーコメント
2023年12月のNY金相場は2071.8ドルで取引を終了し、国内の金価格は10,366円となりました。12月は2056.5ドルで取引をスタートし、1日にはコロナ禍で買われた2020年8月以来3年4ヶ月ぶりに高値2095.7ドルまで上昇、NY金相場価格の史上最高値を更新しました。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による講演発言を受けての米利上げ終了観測と、米ISM製造業景気指数が市場予想を下回ったことから、米金利低下を支援材料としたドル売り、金利の付かない資産の金買いが主な上昇要因です。4日にはNY金相場の最高値更新の流れを引き継ぎ、国内金価格も10,819円と2023年の最高値をつけました。その後は一転して利益確定の売りが優勢となり、8日に発表された米雇用統計が予想を上回ったことから、利下げ開始時期の後退観測により米長期金利が上昇、11日には1991.2ドルまで値を崩しNY金相場にとって一時的な弱材料になりました。12日〜13日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利の据え置きが決まり、年3回の利下げ見通しが示されました。市場は米金利低下を織り込む動きで次第にドル売りが強まり、NY金相場は13日に1987.9ドルの安値をつけた後から再び上昇トレンドに回帰しました。パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で「利下げの時期が次の問題であり、それを検討し議論している」と述べており、市場は既に2024年の利下げ開始を織り込み推移。今後のマーケットの関心は、利下げの開始時期と利下げ回数に移っています。FOMC通過後は、米国GDP確報値の下方修正や、市場予想を下回った米個人消費支出(PCE)物価指数が早期の米利下げ見通しを強める結果となり、NY金相場も年末ラリーを意識した買いが優勢で22日には終値2069.1ドルまで上昇。25日以降は欧米のクリスマス休暇で積極的な売買が手控えられましたが、FRBの利下げ期待からドルは売られ、金利の付かない金は押し目買いが優勢となり、28日には高値2098.2ドルまで上昇する場面がありました。国内では日銀のマイナス金利解除観測が浮上しており、金融緩和政策に修正があればFRBの金利引き下げと合わせて、円高ドル安の大きな材料となります。
【2023年】金相場価格・年間コメント
2023年の金相場価格は大きく上昇した一年になりました。ドル建て金相場は過去最高値となる2,000ドルを突破し、国内金価格は2023年12月4日に10,819円の過去最高値を記録しました。2023年12月末時点では10,366円です。金相場は長期的な上昇トレンドを継続しており、20年以上前の2000年と比べ10倍以上に値上がりしました。金相場価格には各国の金融政策など様々な要因が影響します。2023年は米国の段階的な利上げが7月まで続き、日本のマイナス金利継続によって日米の金利差が大きく拡大しました。ドル円は2023年1月安値の127円台前半から11月高値の151円台後半まで急速に円安ドル高が進行し、国内金価格の急騰には為替の影響が大きかったことがうかがえます。2023年12月に実施された米連邦公開市場委員会(FOMC)において、米国の中央銀行にあたるFRBは年3回の利下げ見通しを示しました。米国の利上げ打ち止め観測から市場は早期利下げ開始期待が広がる展開となり、米金利低下を織り込む動きで年末にかけてドル売りが優勢、ドル円は140円台後半で2023年の取引を終了しています。また、「有事の金」買いとも言われますが、2023年もロシアのウクライナ侵攻に終わりが見えず、地政学リスクが意識されるたびに「安全資産」として金が買われる場面がみられました。2024年はFRBの金利引き下げが予想されています。また、世界的な選挙イヤーでもあり、最大の注目は「米大統領選挙」になるでしょう。2024年3月に各州予備選が集中する「スーパーチューズデー」が予定され、7月には共和党の候補が、8月には民主党の候補が決定し、11月5日の米大統領選「投票日」を迎えます。「もしトラ(もしもトランプ氏が当選したら)」といった表現を目にする機会も増えていますが、事前の候補者動向によっても市場に影響を与えることが予想されます。このように、世界情勢不安は金の需要を高めます。ドル建て金相場は、2024年も下げづらい環境が続く見通しです。国内でもマイナス金利解除に向けた機運が高まっていますが、国内金価格はドル円相場の影響を受けますので、為替次第では再び最高値を更新する場面が見られるのではないでしょうか。
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【監修者情報】
水野崇(みずのたかし)
金・貴金属買取を全国展開している「なんぼや」HPに、平日は毎日「金相場価格」の専門家コメントを提供しています。